メディしるば

ひろく、ふかく、みんな。

私が医学部を目指した理由

今の自分の気持ちの整理用に、医学部をめざす後輩の参考用に、このページを執筆します。

なぜ私は医学部を目指したのか

1, 人間の身体について知りたかったから。
高校生物を習い始めたころ、私はまず好気呼吸のミクロ的な仕組みや細胞小器官について学びました。私はそのとき、それらの複雑でありつつ秩序だった無数のシステムが自分の体の中にいくつも存在しているという事実を知り、感動しました。また、その体験をきっかけとして未習分野である神経伝達や臓器の構造を学び始め、さらに人体の壮大さに圧倒されました。
それらを学ぶ際に標準生理学という本やMSDマニュアルを使っていたため、「医学」との接触回数が多かったことが医学部に興味を持った要因の一つにあるかと思います。 www.msdmanuals.com

2, 心臓突然死について学んで。
ひとを助けたいと強く思うようになったきっかけは、中学校の授業の一環として行われたAED実習で心臓突然死について学んだことでした。心臓突然死は主にVFや心筋症などが原因となることが多く[1]、心停止や呼吸停止を伴うVF・無脈性VTから救うにはAED(除細動器)の使用が欠かせません[2]。当時、公立学校の生徒が学校での活動中に突然倒れ心肺停止状態に陥ったものの、AEDの使用を含む心肺蘇生が適切に行われなかったことが問題になったことをみなさんは覚えているでしょうか。この出来事についても実習の際に学んだ私は「突然大切な人が倒れたら自分は一体何ができるのか」「何もできないでいる自分は許せない」と強く感じて、医師になりたいと考えるようになりました。

aed-project.jp

医学部生として国費を投入されておきながら自分本位の理由とは何事じゃ と思う方もいるかもしれませんが、これが本音なのです。自分の感情のために頑張ることも必要ですよ(たぶん)。

3, 自分の存在価値がわからなかったから。
私は自分が生きている価値がよくわからなくなることがよくあります。
生きているけれど、だからといって誰かの支えになっているわけではない。自分が必要とされている場所なんてない。そんな風にしか思えなくて、つらくて、自分から積極的に他人に貢献することばかりに生きている価値を見出すようになっていました。
そういった自分の意識に気づいたとき、他の人のために頑張れる仕事「医師」に憧れるようにもなりました。ちなみに今では「趣味」に生きる意志を少しは見出せていますが、それでも他人のために頑張ることが一番のモチベーションです。

4, 安定した地位・賃金
文化的で不自由しない生活を営みたいですよね。結婚できるかどうかはわかりませんが、生活をともにしたいと考える相手には、自分以上に快適に、幸せに過ごしてほしいです。

ほかにもいくつか理由はあります。でも、ここでは恥ずかしくて言えません(笑)
医学部に入る前は「○○先生に△△の手術をしていただいて…」「○○(親族)が医師にお世話になって…」といった理由で入学する人が多いのかと思っていましたが、実際入学生に聞いてみると「認めてほしい」「安定した生活を送りたい」「誰もしたがらないことをやりたい」といった理由を多く耳にします。

だから、いま医学部に入りたいと思っているみなさんは「自分の志望理由なんて最悪だ…」などと絶対に思わないでください。面接のときだけちょっと良さげな表向きの理由を考えておき、心の中でその野望(?)を温めておけばよいのです。「自発的に思った理由」を大切にしていけることは、精神衛生上も、人生の選択の上でも本当に大事なことです。

ここまで駄文を読んでくださりありがとうございました。
私は、未来に向かって自分とは何かを問い続けるみなさんを応援します。

それではまた今度お会いしましょう。

《引用・参考文献》
[1] 鮎沢衛. 学校管理下突然死の現状と課題: 救急蘇生・AED普及に伴うパラダイムシフト. Pediatr. Cardiol. Card. Surg. 32, 485–497 (2016).
[2] 三田村秀雄. AED配備の現状. 日内会誌 95, 2469–2475 (2006).